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[ 402] 「うつ」の人とともに(うつ病(鬱病)入門)
[引用サイト]  http://www.n-seiryo.ac.jp/~usui/iyasi/utu.html

最近「うつ(鬱)」の人達が増えています。私自身、ときどき「うつ状態」になって苦しいときがあります。もっと本格的な病気としての「うつ病」に苦しむ人も増えています。私の周囲にもいらっしゃいます。このページでは、特に「うつ病」の人と接している方々のための情報をお送りしますが、心理学や心の病全般について学びたい方にとても、大切な内容だと思います。
前のページで、心の病と言ってもいろいろなレベルがあるとお話ししましたが、「うつ」も同じです。だれでも、悲しい出来事があれば、憂うつな気分になります。これは、病気ではありません。家族の死のような出来事でも、私たちは何日かすれば、また職場や学校に行くことができます。
何日しても普通の活動ができないような状態になると、やや病的な「うつ」になります。さらに、脳の病としての「うつ」があります。これは本格的な治療が必要な病です。何の病気でもそうですが、心配であれば一日も早く診察を受け、早期発見、早期治療を目指しましょう。
このページでは、この本格的な「うつ病」について考えていきます。なお、「躁状態」や、また最近特に増えている軽症の「うつ」については、別の機会に書きたいと思います。
・意欲減退・憂うつ感・悲観的、絶望的思い・睡眠障害・食欲低下・性欲減退・頭痛、めまい、首や肩のこり・人を避ける・死にたいと思う・考えがまとまらない、仕事の能率が落ちるなど。
生活全般にやる気が失われます。これに対して、仕事や勉強はやる気がないが、遊ぶことにはやる気があるというのなら、うつ病ではありません。(アパシーという別の心の問題かもしれませんが。)
これらの症状は、その人の性格や精神の弱さの現れではなくて、病気の症状です。その人を責めるのは間違っています。またその人が変わってしまったと思うのも誤解です。病気が治れば、症状も消えます。
まじめで、能力があり、責任感の強い人。物事を、順調に、そして完全に成し遂げようと考える人。うつ病の人を見ると、怠け者に見えることがありますが、本来は全く正反対の働き者の人達です。むしろ働き者すぎたために、脳が疲れた状態になっているとも言えます。そして、このようなまじめな人だからこそ、うつ状態で仕事のできないことが辛くてたまらないのです。
うつ病を抱えながら、ふつうの社会生活を送っている人達が大勢います。また、歴史に残るような業績をあげている人達もたくさんいます。
・叱咤激励はしない。普通の病気であれば、たとえば「早く元気になって会社に来て下さい。課長がいないとみんな困っています。」といった言葉は、良い励ましの言葉になるでしょう。しかし、うつ病の患者さんには、逆効果です。ますます自分を追いつめることになるからです。むしろ、たとえば「お父さんが入院していても、家族みんなで家を守っているから、お父さんは心配しないで、ゆっくり病気をなおしてね。」といった言葉が有効です。
・不用意に励ますことは厳禁でも、希望を与え、不安や絶望をやわらげることはとても大切です。たとえば、「きっと回復します。」「人間、良いときと悪いときがあって当然です。」「うつは波だから、必ず引いていくものですよ。」
・退職、離婚などの重大な決定は、延期させるようにします。うつ状態の時に、退職や離婚の手続きをしてしまい、後で後悔する方々がいます。
うつ病をはじめ、心の病の治療のためには、家族をはじめ身近な人達の協力が非常に大切です。病を理解し、話を良く聞き、共感的に接する、叱咤激励しないようにしましょう。
悩みを大したことがないと否定したり、不用意な説得、反論、解釈、お説教等をしないようにしましょう。うつの苦しみは、健康な人が外見から想像する以上に大きいのです。
医師の治療方法や治療方針を理解しましょう。医師や薬への不信は、患者に伝わります。心の病に関する薬には、偏見も多いようです。「薬に頼ってはいけない。」などの不適切なアドバイスで薬をやめさせることはとても危険です。
私は医師の言いなりになれとは言いません。薬の量や副作用について疑問があるときには、医師に自分の考えを述べ、よく相談しましょう。
うつの薬は安全です。また普通はとても良く効きます。ただし、飲みはじめはまず副作用が先に出て、数週間後に薬本来のの効果が出ます。また症状が長く続いているときには薬の効果が現れにくいことも理解しておきましょう。また、憂うつな気分が治った後も、しばらくは薬をのむ必要があります。医師の指示を良く聞きましょう。
不用意に運動させたり、本人の意思を無視して、無理な旅行や娯楽などに連れださない方が良いでしょう。光を浴びることや、散歩によって、症状が改善することもありますが、決して無理はいけません。周囲の人間はもちろん善意で行っているのでしょうが、疲労は避けた方が賢明です。運動は 諸刃の剣です。十分良くなった段階での、軽い運動や家事は有用です。重症の場合は、身体の病気と同様に見舞客を断る必要もあります。
症状には、一進一退があります。冬から春の三寒四温と同様です。坂道をまっすぐ上るようには、良くなりません。らせん階段を登るように、あちらこちらに行きながら、ゆっくり良くなっていきます。良くなりそうに見えても、長期間かかることを理解し、決して焦らないようにしましょう。一喜一憂してはいけません。
また、家族が不和になると、患者に悪い影響を与えます。看病で疲れ切ってしまうこともあるでしょう。あのしっかり者だったお父さんやお母さんの今の姿を見るのは、とてもつらいでしょう。でも、こんなときこそ、家族みんなで、支えあい、仲良くなることが大切です。
家族の心労、苦しみは、とても大きいものがあります。疲れはて、いらついてしまうのも無理はありません。家族を責めたりせず、共感的理解を示せれば、どんなによいでしょう。
また、家族が息抜きもできないと、家族の方がまいってしまうこともあります。家族自身のためにも、患者のためにも、友人や親戚のみなさんが、ご家族を支えることが、とても大切です。
家庭で看護ができない・重い身体的合併症・拒食、拒薬・自殺の恐れが強い場合などは、入院が必要です。
鬱病をはじめとし、心の病の薬は、とてもよい薬ができています。薬物療法の他にも、心理療法が行われることもあります。うつ病は、治療のできる病気です。治療すれば本人も家族も楽になれるのに、治療を受けずに苦しみ続けている人がいるのは、とても残念です。
ただし、他の心の病もそうですが、どんなに良く効く薬があっても、それだけでは本当の健康はえられません。
不適切な接し方で問題をこじらせてしまうのではなく、正しい理解に基づいて、ご本人とご家族を支えることができればと願っています。
このページの内容は、あくまでも、一般論です。また、症状が長く続いている難治性鬱病の場合には、別の観点も必要ですが、ここでは省略します。

 

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