比較的とは?/ マイワン
[ 399] 図録▽自殺率の国際比較
[引用サイト] http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2770.html
我が国における自殺者数の推移や自殺率の高さに関しては、自殺者数が史上最多を更新していることもあって大きな関心を呼び、本図録においても最もアクセスの多いテーマの1つとなっている(特に失業者数と自殺者数の月次推移や自殺者数の年次推移を掲載した図録2740)。 本図録が引用される掲示板等での議論を見ると「世界で最も高い日本の自殺率」などの表現も見られたため現時点での自殺率の国際比較の図録も追加することとした。 自殺率はその他の死因別死亡率と同じように人口10万人当たりの死亡者数で比較されることになっている。 日本は欧米先進国と比較すると確かに世界1の自殺率となっている。さらに範囲を広げた国際比較では、図のように、日本は、リトアニア、ベラルーシ、ロシア、ハンガリーなどに次ぐ世界第9位の自殺率の高さとなっている。このように国内の混乱が続く体制移行国に次いで高い自殺率ということから日本の自殺率はやはり異常な値であるといわざるを得ない。 米国の自殺率は日本の半分以下であるが、自殺と同様に社会的ストレスを原因の1つとしていると考えられる肥満による死亡は日本とは比較にならないほど多く、公衆衛生上、大きな問題となっている。この点については図録8800参照のこと。 同じデータを用いて作成した世界分布地図を見ると、ロシアを中心にユーラシア大陸で自殺率が高く、インドやイギリス、スペイン、イタリア、ノルウェイなどユーラシア大陸周辺部、及び北米大陸で低く、ラテンアメリカではさらに低いという状況が見てとれる。アフリカの多くの国ではデータがない。 世界各国の自殺率と他殺率の相関を図録2775に示したが、これを見ればラテンアメリカは自殺率が低いので幸せな国と単純には言えないことがわかる。一方、日本は自殺率は高いが他殺率は世界最低水準である。 旧ソ連に属する両国では男性の自殺率が女性の約6倍と高く、特に45〜54歳の自殺率が高い。体制移行に伴うストレス増大の影響からか、男性の自殺の原因はアルコールが筆頭にあげられている。ロシアでは男性の平均寿命が58.4歳と極めて低く(2002年データ、WHOによる。女性は72.1歳)、異常な寿命低下が厭世観をさらに募らせている悪循環の存在を指摘する人口学者もいるという。もっとも、旧ソ連地域ではソ連時代の1980年代から自殺率は世界の上位にあり、91年末のソ連崩壊に伴う社会混乱にだけもっぱら要因を求めることは出来ない。 フィンランドは自殺率(10万人当たり自殺者数)が1950年の15.5から徐々に上昇し、90年には30.3の高率となり、ハンガリーなどと並ぶ自殺大国となった。狩猟に多くの国民が親しむ国柄ゆえ、銃の所持率が高いうえ、男性は「たくましくあれ」と育てられ、周囲に相談する習慣がなかったことに高い自殺率の原因が求められた。政府は86年から対策に本腰を入れた。96年までに自殺者20%減の目標を掲げ、各界の専門家を動員し、87年の自殺者の家族全員に対する調査による要因の洗い出しを踏まえて、未遂者への公的ケア、アルコール過剰摂取防止など多くの行動計画を策定し、それらを実施に移した結果、現在では、日本を下回る世界13位の21.0人にまで自殺率を低下させることに成功した。 日本の自殺率の高さについては、WHO精神保健部ホセ・ベルトロテ博士はこう言っている。「日本では、自殺が文化の一部になっているように見える。直接の原因は過労や失業、倒産、いじめなどだが、自殺によって自身の名誉を守る、責任を取る、といった倫理規範として自殺がとらえられている。これは他のアジア諸国やキューバでもみられる傾向だ。」こうした点は当の国の人間では気づきにくい見方かと思われる。(自殺許容度と実際の自殺率との相関を図録2784に掲げた。) 大陸の南東方向に位置する島国である日本、スリランカ、キューバの自殺率が何故か共通して高い。女性が書いたスリランカに関するブログを見ると、本気になったスリラ ンカ男性に対して気を持たせるだけ持たせて振ると自殺してしまうこともあるから要注意、といった記事もある。スリランカと日本とでは、インド、あるいは中国という 西隣の大陸国から伝来した仏教を大陸国で衰えた後も保持しているという共通点がある。歴史的には日本と同じように自決をよしとする武士道があったという。「戦場で勇敢に戦って死んだ武士が、死後天に生まれるという思想」をスリランカではヴィルバットゥという。「日本では仏教、ことに禅が武士道を基礎づけたが、セイロン(スリランカ)でも、武士道が仏教(上座部仏教)とむすびついている。」セイロンの博 農村での自殺率が都市の3倍で、また農村の自殺者のうち半分以上が女性である(図録2772参照)。革命後女性の地位は向上したとはいえ農村部ではなお旧態依然の考え方も残っており、また一人っ子政策の結果家庭内で女性を生んだ女性を尊重しない雰囲気が一層強まったといわれる。このため農村女性の自尊心は概して低くなり、結婚後の夫婦関係や嫁姑問題などから生じる悩みを解決する方法を見つけられないまま、安易に自殺を選ぶ人が後を絶たないと。農薬の管理を徹底させることで自殺を減らせたともいわれるが、なお、政府は事態の深刻化を受けて「自殺防止計画」を実施することとしている。 米国では10代後半から20代前半若者の自殺が多く、事故、殺人に次いで死因の第3位に位置している。また若者の自殺の半数以上が銃器を使用しているといわれる。若者の自殺の多さへの懸念は強く、米議会は9月上旬、地方政府のカウンセリングへの補助などを内容とする青少年自殺防止法を可決した。 |
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